現行ギブリは”スポーティかつエレガント”というマセラティだけが成し得る独特の世界観をオーナーに与えてくれる特別な一台である。デビュー以来、熟成を重ね、あらゆる側面で私たちはスポーツサルーンとしての高い完成度をギブリに実感することができる。
激戦区であるEセグメントにおいて、そのユニークな存在感はライバル達の追従を許さない。マセラティの重要なDNAはなんとってもエンジンへのこだわりだ。V6ツインターボに加えて、ハイブリッドという新しいコンフィギュレーションがブランドとして最初に採用されたことも、いかにマセラティがギブリに力を入れているかの証である。さらに十分なシャーシ熟成の末、3.8L V8ツインターボ 最高出力は580PS、最大トルクは730Nmというハイパワーエンジンを搭載するギブリ・トロフェオが登場した。究極のスポーツサルーンの登場はマセラティスタに対する素晴らしい贈り物である。
時を経ても全く古さを感じさせず、その存在感をより高め ている力強い彫像のようなスタイリングはもう一つの重要 なマセラティDNAだ。しかしギブリのスタイリングは単 にスポーティネスを追求したものではない。美しく映える 低いルーフラインを採用しながらも、実は充分な室内高を 持っている。
また、前後ドアのサイズの違いから、リアパッセンジャーのスペースがタイトでないかと思われるかもしれないが、それも杞憂である。スポーツサルーン創りのパイオニアで あるマセラティが蓄積してきたノウハウが活かされ、充分 なリアレッグスペースを持った快適なキャビンが貴方を待 ち受けているのだ。この”Eセグメント唯一の個性的スポーツサルーン“たるポジションは今も健在であることを何よりもお伝えしたい。
ギブリという存在はマセラティにとって何よりも大切なアイコンである。マセラティを代表する大ヒットモデルとなった初代ギブリ以来、そのセグメントは変われども、その時々でもっとも重要な社運を賭けたモデルだけがギブリの名を受け継いだのだ。そんな”ギブリ神話”を今回はお伝えしたい。
初代ギブリはオルシ家傘下時代に誕生した大ヒットモデルであった。1966年に直6エンジン搭載のミストラルの後継としてデビューを飾った2シーター・クーペだ。最高速が競われたまさにスーパーカー全盛期に登場したこともあり、4.7L V8 DOHCドライサンプ仕様のハイパフォーマンス・エンジンが採用された。310bhpを誇り(4.9LのSS仕様では335bhp)、SS仕様では最高速度280km/hを記録した。そのクオリティの高い作り込みと、グラントゥーリスモとしての快適性、さらには高い信頼性はライバル達を一掃するものであった。
続いて1992年に発表されたのが二代目、通称“ギブリⅡ”である。ベースとなるのは1981年に誕生したマセラティにとって初の量販モデルであった“ビトゥルボ”だ。このビトゥルボ・シリーズの最終進化形のひとつが222.4Vと称す2.8L V6(気筒あたり4バルブ)ツインターボエンジン搭載の2ドアクーペであった。このシャーシとパワートレインをベースにマルチェッロ・ガンディーニがスタイリング開発を担当し、完成させたのがギブリⅡだ。ガンディーニはカロッツェリア・ベルトーネ在籍時代にはマセラティ・カムシンのスタイリングも仕上げており、ジウジアーロと並んでイタリアン・カーデザインの巨匠と称された。
ギブリⅡのスタイリングはその少し前に発表されたガンディーニデザインのV8ツインターボエンジン搭載のフラッグシップ、シャマルのイメージをベースに、より洗練され、生産性を高めたものだ。1980年代初頭のトレンドであった直線基調によるスクエアなビトゥルボのスタイリングを“張りのある”ふくよかなボディサーフェスに仕上げたガンディーニの腕はさすがであった。
このギブリⅡ発表の翌年にはマセラティのオーナーであったアレッサンドロ・デ・トマソが心筋梗塞で倒れたことから、マセラティの株式はフィアットオート(現ステランティス)へ譲渡され、名実ともにフィアット傘下となった。ここで発売直前であったギブリⅡにエンジニアリング面の見直しが入り、多くの改善が行われた。つまりこのギブリ以降、製品クオリティは格段に向上した。
当時は世界最大のマーケットである北米への輸出が途絶えていた為、日本はマセラティを最も多く販売する国の一つとなり、マセラティブランドの認知は特に日本において高まった。ギブリⅡの高い商品力と日本マーケットにおけるマセラティの大きな存在感が当時のマセラティの業績を支えたのだった。
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